福岡高等裁判所宮崎支部 昭和28年(う)473号 判決
刑事訴訟法第一八九条第二項によると司法警察職員は犯罪があると思料するときは犯人及び証拠を捜査するものとすると規定せられておりまた刑法第一八〇条は本件犯罪の親告罪であることを定めている。よつて司法警察職員は果して所論のように親告罪については告訴権者から告訴した後でなければ犯罪後の捜査に着手することができないものであるかどうかの点について按ずるに親告罪の告訴権者は犯人を知つた日から六ケ月以内に告訴しなければならないことは刑事訴訟法第二三五条第一項本文に規定せられてあるから犯罪後相当日時の経過後に告訴がある場合も予想せられるところ若し所論のように告訴を待たなければ犯罪捜査に着手することができないものとすれば親告罪においては犯人の発見、証拠の集しゆうに大きな制約をうけひいては後日告訴があつたとしても犯人の検挙公訴の提起を不能ならしめる場合も予想せらるるのである。右の実状と法律が親告罪として規定した場合は個人の被害法益を主とした場合が多い点から考え親告罪の告訴は被害者が犯人の処罰を求めるか否かを公訴提起の要件として定めたに過ぎないものと解せられるので司法警察職員は親告罪について告訴の提出されていない場合でも犯罪の捜査に従事することは何等法の禁ずるところではないものといわなければならない。従つてこれと反対の見解を前提とする論旨は採容の限りではない。
(後略)